■来年7月にオープン予定の県立野球場(新潟市中央区長潟)が、思わぬ試練に見舞われている。球場名が決まらないうえ、県が運営を委託する指定管理者の選考もずれこみ、関係者をやきもきさせている。待望のスタジアムのはずだが、どれだけの利用があるのか、そんな不安も。秋が深まり、今年の野球シーズンはほぼ終わったが、球場をめぐる動きはこれから山場を迎える。(渋谷正章)
●「ドカベン」両立せず 〈球場名〉
「県立野球場」はあくまで仮称だ。本来なら早く正式名称を決め、PRに役立てたいところだが、オープンまで約9カ月まで迫った今も決まっていない。ある名称を巡って議論が割れているためだ。
新潟市出身の漫画家、水島新司さんの名作「ドカベン」を球場名につけようとの動きがある。活動の中心的存在、NPO法人「新潟野球人」の中野久・事務局長(64)は「ドカベンは野球ファンだけでなく、県民全体の誇り。新潟を全国にアピールする絶好の名前でもある」。すでに約3万3千人の署名を集め、近く泉田裕彦知事に手渡す。
しかし、県は慎重だ。泉田知事は9月、県議会で「ドカベン」の扱いについて質問され、「新潟をよりイメージできる名前にすべきだとの声もある。もう少し状況を見守りたい」と答弁した。
県のこうした姿勢は「ドカベン」がネーミングライツと両立しにくいことが影響している。
県立野球場に隣接するビッグスワンは、東北電力と07年3月から年間1億2千万円
で3年契約を締結。年間約3億4千万円にのぼる支出の3分の1をまかなっている。だが、野球場に「ドカベン」をつけると企業名がかすんでしまい、立候補する企業が出て来ない恐れがあるという。実際、複数の野球関係者が「ある企業が水面下で手を挙げたが、ドカベンが候補になり断ったようだ」と話す。
中野事務局長は「県は2月、水島先生を訪れ、ドカベンを使う了承を得た。しかし、3月、ネーミングライツと両立できないからと県から断ってきたそうです。水島先生は今もドカベン単独なら使用を認めてくださっている。ネーミングライツありきでなく、真に愛される名前をつけて欲しい」と語る。
県は「県民の費用負担を減らすためには、ネーミングライツは必要。ドカベンの愛称は、すでに神奈川県の大和引地台球場でも使われている」と説明。今年度中に企業名を冠した球場名を決めたいとしている。
●試算巡り誤算生じる 〈指定管理者〉
全国的に野球場を管理、運営するのは自治体の委託を受けた指定管理者になることが多い。県も募集したところ、ビッグスワンの指定管理者であるアルビレックス新潟・都市緑花センターグループから応募があった。
ところが誤算が生じた。7月に行われた審査委員会で、同グループと県の試算の隔たりが明らかになった。
同グループは県内の需要や天候などを考え、利用できるのは年間140日と計算。プロ野球やコンサートなど、大規模イベントは雨天中止の可能性があるとして収入に入れなかった。県は年間
200日の利用があると主張。およそ収入6千万円、支出1億800万円で、赤字分の4800万円を県が負担するとした。イベント収入も入れたため、両者の収支計算は大きな差が出た。
このため、市民の代表らで構成される審査委員の評価は分かれた。当初は審査結果を9月の県議会に諮り、指定管理者を決めるはずだったが、予定がずれ込んだ。
影響は来季の日程調整に及ぶ。指定管理者が決まらないと、利用料金が確定しないためだ。来年9月27~30日には国体の高校野球(硬式)競技が開かれるなど、元々日程がきついこともあり、社会人の野球連盟は「来年は県立を使わない」。BCリーグの新潟アルビレックスBCは「来季から使いたいが、どれだけ使えるか分からない」と話す。
審査結果はようやく今月末にも発表される。同グループが不適格と判断された場合、選択肢は候補者を再募集するか、球場管理を県直轄にすると見られる。
●減免望むアマ関係者 〈料金〉
県内の野球界にとって、県立野球場は長年の夢だった。他球場は老朽化が目立ち、ナイター設備も限られている。日本野球機構(NPB)の公式戦開催は96年6月、長岡市悠久山と新潟市鳥屋野の2球場であった近鉄―西武以来、途絶えている。
7月の指定管理者審査委員会では、来季、NPBの公式戦を4試合開催する予定であることが明らかになった。セ・リーグの2カードが組まれているという。そのほか2010年7月にはオールスター開催が決まっている。
県高野連は来夏の全国高校選手権新潟大会について、県立野球場で開会式を開くほか、準々決勝から決勝までの計7試合を行う意向だ。「球場は県民から注目されている。その要望にこたえたい」と説明する。
ただ、他方で「新球場を使いたいが、使いにくい」という声があるのも事実だ。その理由が料金設定だ。
各野球団体に提示された料金案は、球場内の会議室などを含め1日約15万~20万円という。しかし、これは鳥屋野球場の約2倍にあたる。アマ野球関係者には「県が条例で減免措置を打ち出して欲しい」「減免がなければ、引き続き他球場で試合をするかもしれない」「みんなが使いやすい新球場になって欲しい」といった意見が多い。
新潟野球人の中野事務局長は「ドカベンを前面に出し、事業展開をしては」と提案する。「水島漫画のミュージアムを開き、“ドカベン米”を販売する。テナントには常設の野球教室を置く。新潟―福岡の航空便存続を生かし、福岡ソフトバンクホークスの準本拠化を目指す。事業や広告収入を増やせば、ネーミングライツをしなくても、利用料金を安くできる」
県は「他県と比べ、高い料金設定ではない。県民負担をこれ以上大きくするのは難しく、ご理解いただきたい」と説明している。
■《県立野球場》90年に基本計画が作られたが、中越地震などの影響で建設が遅れ、07年に着工した。来年6月に完成し、7月にオープンする予定。県内野球場では最大の3万人収容。両翼100メートル、中堅122メートルの人工芝のグラウンドで、プロ野球公式戦が開催可能な規格の夜間照明や、一、三塁側には約1千平方メートルの室内練習場を備える。総事業費は約89億円で、県のほか新潟市が約18億円を負担している。
---------- [asahi.com:2008年10月28日] ----------
●「ドカベン」両立せず〈球場名〉・・・ どちらの意見もわかりますね!
●試算巡り誤算生じる〈指定管理者〉・・・ 直営で運営してみれば良いのではないのでしょか? 制度導入の意義が「効果的・効率的な管理を行い、住民サービスの向上と施設管理経費の節減を図るため…」である以上、何が何でも指定管理者にする必要はないと思います。
●減免望むアマ関係者〈料金〉・・・ 一般的に公共施設の減免規定については、多少疑問があります。批判を受けると思われるので、詳しくは書きませんが…大昔の規定をずるずると既得権的に行われているケースが各自治体には多く、住民に理解されるように現代風に改善するべきだと常々思っています。